最終更新: 2026年10月5日
体幹とは、背骨とお腹を囲む胴体の筋肉のまとまりで、腹部・背中・お尻・股関節まわりの筋肉を指します。体幹トレーニングで体幹の持久力が伸びたという研究はありますが、運動能力への効果は「わずか」とした系統的レビューもあります。初心者は、カールアップ・サイドプランク・バードドッグの3種目から始め、サイドプランクなら10秒保持×6・4・2回が目安です。
この記事の要点
- 体幹はお腹だけではなく、背中・お尻・股関節まわりまで含む筋肉のまとまりです
- 体幹トレーニングだけを足した効果は、持久力・走る効率・運動能力のどれも、まだはっきりしていません
- 動かずに姿勢を保つ種目から始め、荷物を持って歩く種目、動きの中で胴体を保つ種目へ進めます
体幹とはどこの筋肉ですか
スポーツ医学の総説では、体幹は「背骨とお腹の内臓を囲む胴体の筋肉の集まり」と説明されています。腹部・お尻・股関節まわり・背骨沿いの筋肉が連携して背骨を安定させるという考え方です。
| 部位 | 主な筋肉 |
|---|---|
| 腹部 | 腹直筋・腹斜筋・腹横筋 |
| 背中 | 背骨沿いの筋肉(脊柱起立筋など) |
| お尻・股関節まわり | 大臀筋・中臀筋など |
「体幹=腹筋」と考えると、背中とお尻が抜け落ちます。体幹トレーニングは、腹筋を割るための運動とは目的が違います。
体幹トレーニングで何が変わりますか
研究で分かっていることを、項目ごとに整理しました。
| 項目 | 研究で分かっていること |
|---|---|
| 体幹の持久力 | 男子大学生選手21人のうち11人が、週3回×8週の体幹トレーニングを追加しました。この群ではプランク系テストの保持時間が約194秒から約242秒に伸びましたが、対照群(10人)との差は統計的にははっきりしませんでした |
| 走る効率 | 同じ研究で、トレーニング群では一部の速さで心拍数や酸素の消費が前より下がりました。対照群との差はほぼ出ていません |
| 運動能力 | 24本の研究をまとめた系統的レビューは、スクワットの最大重量や垂直跳びなど運動能力の指標への効果を「わずか」と結論しました |
| お腹の脂肪 | 腹筋運動を週5日×6週続けても、お腹の脂肪や腹囲は変わりませんでした |
体幹トレーニングを続けた人の体幹の持久力が伸びた、という結果はあります。ただ、体幹トレーニングだけを足した効果は、どの項目でもまだはっきりしていません。
「体幹トレーニングは意味ない」は本当ですか
「意味ない」という声には、根拠になる研究があります。2012年の系統的レビューによると、多くの研究で体幹トレーニングはほかの練習と組み合わせて行われており、体幹だけの効果を切り分けにくい状況です。
24本の中には、体幹の筋力や安定性の測定値さえ伸びなかった研究もありました。体幹を主な目的にした研究に絞っても、結果はまちまちでした。
慢性の非特異的腰痛(原因を特定できない腰痛)では、2016年のコクラン・レビュー(29試験・2,431人)が、深い体幹の筋肉を狙うモーターコントロール運動を調べています。最小限の介入と比べると痛みは和らぎましたが、ほかの運動より優れてはいませんでした。
お腹を引き締める目的なら、腹筋運動だけでは足りません。6週間の研究で、腹筋の回数は伸びても脂肪は減りませんでした。
つまり、体幹トレーニングは万能ではありません。「重い物を扱うときに胴体を崩さない」のように目的を絞り、ほかの練習と組み合わせて使う練習です。
動かない種目と、荷物を持って動く種目は何が違いますか
体幹トレーニングは、大きく2種類に分かれます。
| 種類 | 例 | 向く目的 | 物足りない点 |
|---|---|---|---|
| 動かない種目 | プランク、サイドプランク、バードドッグ | 胴体を固める感覚を覚える | 歩く・走る・運ぶ動きとは形が違う |
| 荷物を持って動く種目 | ファーマーズキャリー、スーツケースキャリー | 動きの中で胴体の形を保つ | 重さを扱うため、フォームが崩れると腰に負担がかかる |
動かない種目にも利点があります。対照群を含む男性24人の6週間の研究では、胴体を動かさない練習のほうが、力を抜いた状態での胴体の硬さが高まりました。力を入れた状態の硬さは、どの群でも変わりませんでした。
一方、ストロングマン競技の種目を分析した研究は、荷物を持って歩く種目は持ち上げる種目と違う能力を使うとして、運ぶ練習を加える価値を示しています。
ただし片手持ちには注意が要ります。30kgを片手で運ぶと、15kgずつ両手で運ぶより腰への圧迫が大きくなりました(両手に分けると44%減)。片手で運ぶ練習は、軽い重さから始めてください。
初心者は何から始めればいいですか
3段階に分けたメニュー例です。段階1は、背骨の研究で知られるスチュアート・マクギル氏の「Big 3」です。米国の医療機関(MUSC Health)が紹介した手順に沿っています。
| 段階 | 種目 | 秒数・回数の目安 |
|---|---|---|
| 1. 動かずに保つ | マクギル式カールアップ(腰の下に手を入れ、肩を床から少し浮かせる) | 8〜10秒保持×6回→4回→2回(脚を入れ替えて反対側も) |
| 1. 動かずに保つ | サイドプランク | 10秒保持×6回→4回→2回(左右とも) |
| 1. 動かずに保つ | バードドッグ(四つばいで対角の手足を伸ばす) | 1〜3秒保持×左右6回→4回→2回 |
| 2. 持って歩く | ファーマーズキャリー(両手)、スーツケースキャリー(片手) | 軽い重さで、姿勢が崩れない距離まで(片手は左右とも) |
| 3. 動きの中で保つ | 重りを持ったランジ、ゴブレットスクワット | 8〜12回×1〜3セット |
段階1は、1回ごとに3〜5秒、6回・4回・2回の各セットの間に20秒休みます。10秒がきつい場合は、サイドプランクは5秒、カールアップは3秒から始めて10秒まで延ばします。
正面のプランクはBig 3に入っていません。入れる場合は、同じ10秒保持の組み方を当てはめるのが本サイトの目安です(出典の手順ではありません)。
頻度について、紹介記事は毎日行うことを勧め、運動前の準備運動に組み込む方法を挙げています。筋力トレーニングとしての目安は、米国スポーツ医学会(ACSM)と厚生労働省が示す週2〜3日です。段階3の回数とセット数は、ACSMの初心者向けの目安に合わせています。
段階3の種目はランジのやり方とゴブレットスクワットのやり方で詳しく扱っています。
ハイロックスではどこで効きますか
ハイロックス(HYROX)は、1kmのランと8種目を交互に行うフィットネスレースです。体幹の出番が多いのは、重い物を押す・運ぶ・担ぐ種目です。
| 種目 | 体幹の役割 |
|---|---|
| Sled Push(スレッドプッシュ) | 前傾した姿勢のまま、脚の力をそりへ伝える |
| Farmers Carry(ファーマーズキャリー) | 両手の重さ(オープン部門は女子2×16kg・男子2×24kg)で胴体が揺れるのを抑える |
| Sandbag Lunges(サンドバッグランジ) | 両肩に乗せたバッグを支えたまま、100mのランジで上体を保つ |
サンドバッグは、ルール上常に両肩で完全に支える必要があります。地面や脚など、両肩以外に置いて重さを逃がすと違反です。
段階2のキャリーは、重さを持ったまま胴体を保つ練習として、ファーマーズキャリーの準備になります。サンドバッグランジとは担ぐ位置が違うため、ランジ自体の練習も別に要ります。
種目ごとの技術はSled Push攻略、Farmers Carry攻略、Sandbag Lunges攻略にまとめています。練習全体の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイドを参照してください。
注意点・向かない人・限界は?
腰や首に痛みがある人。 痛みがあるまま自己判断で始めず、医師に相談してください。体幹トレーニングは、痛みの治療の代わりにはなりません。
体幹トレーニングだけで速くなりたい人。 本サイトが確認した範囲では、ハイロックスの選手を対象に体幹トレーニングの効果を調べた研究は見つかりませんでした(2026年10月時点)。ランと種目そのものの練習の代わりにはなりません。
お腹の脂肪だけを落としたい人。 目的が脂肪なら、食事を含めた生活習慣の見直しが先です。
よくある質問
Q1: 体幹トレーニングは毎日やってもいいですか?
A: Big 3を紹介した医療機関の記事は、毎日行う前提で、運動前の準備運動に組み込む方法を勧めています。筋力トレーニングとしての目安は、ACSMと厚生労働省が示す週2〜3日です。
Q2: カールアップは、普通の腹筋運動(上体起こし)と何が違いますか?
A: マクギル式カールアップは、腰の下に手を入れ、肩を床から少し浮かせた位置で止めます。上体を起こし切る動きではありません。
Q3: 練習のどこに入れればいいですか?
A: 段階1は、運動前の準備運動に組み込む方法が紹介されています。段階2・3は、ほかの筋力トレーニングと同じ日に行って構いません。
Q4: 器具が無くてもできますか?
A: 段階1は器具なしでできます。段階2は、水を入れたペットボトルや買い物袋でも代わりになります。自宅での練習は自宅だけでハイロックスに備えるトレーニングにまとめています。
Q5: ケトルベルが1個あれば何ができますか?
A: 片手で持って歩くスーツケースキャリーと、胸の前で抱えるゴブレットスクワットができます。ほかの種目はケトルベルトレーニング入門を参照してください。
まとめ
体幹は、腹部・背中・お尻・股関節まわりを含む胴体の筋肉のまとまりです。体幹トレーニングは万能ではなく、目的を絞ってほかの練習と組み合わせる練習です。
初心者は、カールアップ・サイドプランク・バードドッグから始め、荷物を持って歩く種目、動きの中で保つ種目へ進めてください。ハイロックスに向けた練習の全体像はハイロックスのトレーニング完全ガイド、持って歩く種目の技術はFarmers Carry攻略で確認できます。
※本サイトはハイロックス(HYROX)の非公式のファンサイトです。HYROXおよび関連する名称・ロゴは HYROX World GmbH の商標であり、本サイトは同社およびその関連会社とは一切関係がありません。大会日程・ルール・料金は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は公式サイトをご確認ください。
※本記事は医療・健康上の助言ではありません。持病のある方、体調に不安のある方は医師に相談のうえ運動してください。記載の秒数・回数・セット数は一般的な目安で、個人の状態に応じた処方ではありません。
※本記事は次の資料に基づきます。種目の重量・動作基準は HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27 によるもので、ルールブックは毎シーズン改訂されます。
- 体幹の定義: Akuthota ほか(2008)Core stability exercise principles
- 体幹トレーニングと運動能力: Reed ほか(2012)
- 体幹の持久力と走る効率: Hung ほか(2019)
- 慢性腰痛とモーターコントロール運動: Saragiotto ほか(2016)コクラン・レビュー
- 腹筋運動とお腹の脂肪: Vispute ほか(2011)
- 動かない練習と胴体の硬さ: Lee・McGill(2015)
- 運ぶ種目の分析: McGill ほか(2009)
- 片手と両手で運ぶときの腰の負担: McGill ほか(2013)
- Big 3の手順・頻度: MUSC Health “The Big Three”(2022)
- 頻度・回数: ACSM Position Stand(2009) / 厚生労働省「筋力トレーニングについて」
- 重量・動作基準: HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27
