最終更新: 2026年11月4日
ハムストリングとは、太ももの裏にある筋肉の総称で、股関節を伸ばす働きと膝を曲げる働きを持ちます。鍛え方の基本は、股関節を伸ばす種目と膝を曲げる種目を1つずつ組み合わせることです。自宅ならブリッジとタオルを使ったレッグカール、ジムならルーマニアンデッドリフトとレッグカールマシンが候補です。8〜12回で限界になる負荷で1〜3セット、週2〜3日行います。
この記事の要点
- 45度の台で行う股関節の種目は大腿二頭筋の長頭を、ノルディックは半腱様筋を優先して働かせ、種目によって強く働く場所が違います
- 座って行うレッグカールは、うつ伏せで行う形より太ももの裏の筋肉が大きく増えました(12週間で14%対9%)
- ノルディックハムストリングを含むプログラムで肉離れが約半分になったというメタ分析がある一方、方法を見直した再解析では効果は決定的でないとされています
ハムストリングはどこにあり、何をする筋肉ですか
太ももの裏は、大腿二頭筋(長頭と短頭)、半腱様筋、半膜様筋でできています。短頭を除く3つは、股関節と膝の両方をまたぐ筋肉です。
| 筋肉 | またぐ関節 | 主な働き |
|---|---|---|
| 大腿二頭筋(長頭) | 股関節と膝 | 股関節を伸ばす・膝を曲げる |
| 半腱様筋・半膜様筋 | 股関節と膝 | 股関節を伸ばす・膝を曲げる |
| 大腿二頭筋(短頭) | 膝だけ | 膝を曲げる |
スクワットの深さを比べた研究では、太ももの裏の筋肉はどちらの深さでも増えませんでした(FAQのQ2も参照)。しゃがむ種目の詳細はスクワットのやり方にまとめています。
なぜ股関節の種目と膝の種目を両方やるのですか
働く場所が種目によって違うからです。男性24人の研究では、45度の台で行う股関節の種目は大腿二頭筋の長頭を、ノルディックハムストリングは半腱様筋を優先して働かせました。
男性30人が10週間練習した研究では、45度の台で行う股関節の種目のほうが、ノルディックより大腿二頭筋の長頭が大きく増えました。半腱様筋は、どちらの種目でも同じくらい増えています。ジムの種目では、男性12人の研究でルーマニアンデッドリフトが、レッグカールなど4種目の中で太ももの裏の筋活動が最も大きい種目の1つでした。
下の表は、同じ動き(股関節を伸ばす・膝を曲げる)で種目を分けた本サイトの整理です。ブリッジやタオルのレッグカールは、研究で筋肉の増え方を確かめた種目ではありません。
| 分類 | 自宅でできる種目 | ジムの種目 |
|---|---|---|
| 股関節系(お尻を後ろへ引く・持ち上げる) | ブリッジ、片脚ブリッジ | ルーマニアンデッドリフト、ケトルベルスイング |
| 膝系(かかとをお尻へ引き寄せる) | タオルやスライダーのレッグカール、ノルディック | レッグカールマシン |
片方の分類だけだと、強く働く筋肉が偏ります。本サイトでは、1回の練習で両方の分類から1種目ずつ選ぶ形を勧めます。
レッグカールは座る形と寝る形のどちらがよいですか
選べるなら座る形です。20人が片脚を座る形、もう片脚をうつ伏せの形で、12週間レッグカールを続けた研究があります。
| 項目 | 座る形 | うつ伏せの形 |
|---|---|---|
| 太ももの裏全体の増え方 | +14% | +9% |
| 膝だけをまたぐ短頭 | +10% | +9% |
| 条件 | 1回だけ上げられる最大の重さの70%・10回×5セット・週2回 | 同じ |
座ると股関節が曲がり、2つの関節をまたぐ筋肉が引き伸ばされた状態で働きます。2つの関節をまたぐ3つの筋肉は、座る形で8〜24%、うつ伏せで4〜19%増えました。膝だけをまたぐ短頭は差がありませんでした。
自宅とジムでは何をすればいいですか
米国スポーツ医学会(ACSM)の初心者向け指針は、8〜12回で限界になる重さを1〜3セット、週2〜3日としています。自宅の種目も、8〜12回で限界になる難しさに調整してください。
| 場所 | 股関節系 | 膝系 |
|---|---|---|
| 自宅 | ブリッジ→片脚ブリッジ 8〜12回×1〜3セット | タオルのレッグカール 8〜12回×1〜3セット |
| ジム | ルーマニアンデッドリフト 8〜12回×1〜3セット | レッグカールマシン(座る形)8〜12回×1〜3セット |
タオルのレッグカールは、仰向けでかかとを滑りやすい床のタオルに乗せ、お尻を浮かせたまま、かかとをお尻へ引き寄せる種目です。ルーマニアンデッドリフトの型はデッドリフトのフォームで扱っています。
ノルディックは、膝立ちで足首を固定し、股関節を伸ばしたまま上体をゆっくり前へ倒す種目です。少ない量(約1〜2セット×3〜5回・週1〜2回)でも、下ろす局面の筋力は多い量と同程度に伸びたというメタ分析があります。ただし筋の長さや厚みが変わったのは、多い量(約2〜3セット×8〜12回・週2〜3回)だけでした。対象はサッカー選手です。
効いている感覚がないときはどう直しますか
ここで紹介した研究が測っているのは、効いている感覚ではなく筋肉の量や筋活動です。本サイトでは、感覚よりフォームを崩さずに8〜12回できているかを基準にします。そのうえで、よくある崩れは次の通りです。
| 種目 | よくある崩れ | 直し方 |
|---|---|---|
| ルーマニアンデッドリフト | 膝を曲げてしゃがむ形になる | 膝は軽く曲げたまま固定し、お尻を後ろへ引く |
| ルーマニアンデッドリフト | 腰が丸まる | 重さを下げ、太ももの裏が伸びるところで止める |
| レッグカール | 反動で上げ、すぐ落とす | 重さを下げ、下ろす局面をゆっくりにする |
| ノルディック | 腰を曲げて前屈する | 股関節を伸ばしたまま、倒す範囲を短くする |
ノルディックハムストリングで肉離れは防げますか
研究の評価が分かれています。15本の研究(8,459人)をまとめた2019年のメタ分析では、ノルディックを含むプログラムで肉離れの発生が約半分(リスク比0.49)になりました。
一方、2021年の再解析は、15本のうちノルディックの有無を無作為に割り付けた試験は5本だけだと指摘しました。1本を加えた再計算ではリスク比0.59で、効果は決定的でないと結論しています。
本サイトでは、ノルディックを「肉離れを確実に防ぐ種目」ではなく、膝系の選択肢の1つとして扱います。
ハイロックスではどこで効きますか
ハイロックス(HYROX)は、1kmのランと8種目を交互に行うフィットネスレースです。太ももの裏が関わる主な場面は次の2つです。
- Sled Pull(スレッドプル): 後ろに体重を預け、脚で踏ん張って引きます。本サイトでは、股関節系の種目がこの姿勢を支える力の準備になると考えます。姿勢はSled Pull(スレッドプル)攻略にまとめています
- Sandbag Lunges(サンドバッグランジ): ランジ自体も太ももの裏を使う種目で、研究では歩幅が広いほど太ももの裏の筋活動が大きくなりました。動作基準はSandbag Lunges攻略で扱っています
ランのペースの考え方はラン強化とペース配分戦略、練習全体の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイドにまとめています。
注意点・向かない人・限界は?
初めて下ろす局面を強く行う人。 練習していない人が重い負荷でレッグカールを下ろす動作だけ行った研究では、24時間後に最大の力が12〜24%落ちました。12週間練習した脚では、変化は0〜5%程度でした。ノルディックは少ない回数から始めてください。
肉離れの経験がある人、太ももの裏に痛みがある人。 痛みがあるまま続けないでください。再開の時期や種目は自己判断せず、医師に相談してください。
研究の限界。 筋肉の増え方を測った研究は、若い男性や競技選手が中心で、人数も数十人規模です。肉離れのメタ分析は人数が多い一方、無作為に割り付けた試験は一部です。一般の初心者に同じ効果が出るとは限りません。
よくある質問
Q1: ハムストリングとハムストリングスは違うものですか?
A: 同じ太ももの裏の筋肉群を指します。複数の筋肉の集まりなので、英語では複数形の「ハムストリングス」と呼ぶこともあります。
Q2: スクワットだけで太ももの裏は鍛えられますか?
A: 本サイトは難しいと見ています。スクワットの深さを比べた研究では、太ももの裏の筋肉はどちらの深さでも増えませんでした。股関節系と膝系の種目を足してください。
Q3: 器具が無い自宅では何から始めればいいですか?
A: 上の自宅の表のとおりです。ブリッジが楽になったら片脚ブリッジへ進めます。自宅練習の全体像は自宅だけでハイロックスに備えるトレーニングを参照してください。
Q4: 毎日やってもいいですか?
A: 初心者は休息日を入れて週2〜3日が目安です。筋肉痛が強い日の扱いは筋肉痛の回復で扱っています。
Q5: ノルディックが1回もできません。
A: 倒す範囲を短くし、床に手をついて受け止める形から始めてください。体を起こすときは手で床を押して戻ってかまいません。
Q6: ケトルベルスイングは太ももの裏に効きますか?
A: 股関節を伸ばす種目で、太ももの裏も働きます。お尻を引く振り方のほうが、しゃがむ振り方より太ももの裏の筋活動が大きいという研究があります。詳しくはケトルベルスイングの効果とやり方を参照してください。
まとめ
種目は、股関節系と膝系から1つずつ選び、8〜12回で限界になる負荷で1〜3セット、週2〜3日行います。
レッグカールは、選べるなら座る形を選んでください。ノルディックの肉離れ予防の効果は評価が分かれているため、少ない回数から膝系の選択肢の1つとして使います。練習計画はハイロックスのトレーニング完全ガイドを参照してください。
※本サイトはハイロックス(HYROX)の非公式のファンサイトです。HYROXおよび関連する名称・ロゴは HYROX World GmbH の商標であり、本サイトは同社およびその関連会社とは一切関係がありません。大会日程・ルール・料金は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は公式サイトをご確認ください。
※本記事は医療・健康上の助言ではありません。持病のある方、体調に不安のある方は医師に相談のうえ運動してください。記載の回数・セット数は一般的な目安で、個人の状態に応じた処方ではありません。
※本記事は次の資料に基づきます(確認日 2026-11-04)。研究の多くは抄録で確認したもので、人数の少ない研究を含みます。
- 太ももの裏の構造と働き: Hu・Raja「Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Hamstring Muscle」(StatPearls)
- スクワットの深さと筋肉の増え方: Kubo ほか(2019)
- 種目による働く場所の違い: Bourne ほか(2017)Impact of exercise selection on hamstring muscle activation
- 股関節の種目とノルディックの10週間: Bourne ほか(2017)
- ルーマニアンデッドリフトの筋活動: McAllister ほか(2014)
- 座る形とうつ伏せのレッグカール: Maeo ほか(2021)
- 回数・頻度: ACSM Position Stand: Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults(2009)
- ノルディックの量: Cholp・Zemková(2025)
- ノルディックと肉離れ(メタ分析): van Dyk ほか(2019)
- ノルディックと肉離れ(再解析): Impellizzeri ほか(2021)
- ランジの歩幅と筋活動: Escamilla ほか(2025)
- ケトルベルスイングの振り方: Del Monte ほか(2020)
