最終更新: 2026年10月26日
ケーブルロー(ケーブルローイング)は、ケーブルマシンに座ってハンドルをお腹へ引き寄せる背中の種目です。主に広背筋と、肩甲骨を寄せる僧帽筋中部・菱形筋が働きます。上体を垂直に保ち、肘を脇腹に沿わせて引きます。重さは8〜12回で限界になる重さを1〜3セット、週2〜3日が初心者の目安です。三角形のハンドルで狭く握ると広背筋、長いバーで広く握ると僧帽筋がより働きます。腰を振るなら重さを下げます。
この記事の要点
- 研究では、シーテッドロウは広背筋と僧帽筋中部・菱形筋の活動が高い種目でした
- 三角形のハンドルで狭く握ると広背筋、長いバーで広く握ると僧帽筋がより働きます
- 腰を振る・肩がすくむ・肘が開くときは、まず重さを下げて動きを直します
ケーブルローはどこに効きますか
体を鍛えた男性8人を対象に、引く種目5つを1RM(1回だけ上げられる重さ)の70%で比べた国内の研究があります。広背筋の活動はシーテッドロウとラットプルダウンで高く、僧帽筋中部はシーテッドロウとベントオーバーロウで高くなりました。著者は、シーテッドロウを広背筋と僧帽筋中部に最も効果的な種目とまとめています。
男性12人でラットプルダウン2通りとシーテッドロウ2通りを止めた姿勢で比べた別の研究でも、僧帽筋中部・菱形筋の活動はシーテッドロウで高くなりました。この研究は2つの筋肉を1つの組として測っています。
| 筋肉 | 場所 | ケーブルローでの主な役割 |
|---|---|---|
| 広背筋 | 脇の下から腰にかけての背中 | 肘を後ろへ引く |
| 僧帽筋中部・菱形筋 | 左右の肩甲骨の間 | 肩甲骨を背骨へ寄せる |
| 三角筋後部 | 肩の後ろ側 | 腕を後ろへ引く動きを助ける |
| 上腕二頭筋 | 力こぶ | 肘を曲げる |
※筋活動は筋電図で測った値で、筋肉の増え方を直接比べた研究ではありません。
正しいやり方は?シーテッドケーブルローの手順
米国運動協議会(ACE)の手順と、筋電図の研究で使われた動きを合わせると、次の順になります。
- ハンドルを付けて座り、足を床か足台に置いて膝を軽く曲げます
- 腕を伸ばしてハンドルを握り、上体を床と垂直にします。肩は前に出た状態から始めます
- 胸を張り、肩甲骨を寄せながら肘を後ろへ引きます
- ハンドルがお腹に触れたら、1秒ほど止めます
- 上体を動かさずに、ゆっくり腕を伸ばして戻します
研究では、引く局面と戻す局面をそれぞれ2秒かけていました。戻すときに重りを落とさず、引くのと同じ速さで戻します。息は止めずに続けます。厚生労働省の指針も、血圧の急な上昇を防ぐため息をこらえないよう勧めています。
グリップとハンドルで何が変わりますか
鍛えた男性14人で、狭い握りと広い握りを比べた2026年の研究があります。狭い握りは三角形のハンドルをお腹へ、広い握りは長いバーを胸の下へ引きました。
| 握り | ハンドル | 引く位置 | 活動が大きかった筋肉 | 8回で限界になる重さ(平均) |
|---|---|---|---|---|
| ナロー(狭い) | 三角形のハンドル | お腹 | 広背筋 | 50.2kg |
| ワイド(広い) | 長いバー | 胸の下 | 僧帽筋(上部・中部・下部)、三角筋中部(横) | 41.4kg |
ワイドのほうが扱える重さは軽くなりました。握りを変えたら、重さも決め直してください。
肘の開き方で比べた研究もあります。男女21人が、肘を脇に沿わせる握り3種類と、肘を60度・90度に開いた引き方などを比べました。肘を体に近づけるほど出せる力と広背筋の活動が大きくなり、肘を開くほど、僧帽筋上部・中部と三角筋後部の活動が大きくなりました。広背筋を狙うなら肘を脇腹に沿わせ、肩甲骨の間を狙うなら肘を開く、と使い分けられます。
重さと回数はどう決めますか
米国スポーツ医学会(ACSM)の初心者向けの目安に合わせます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 重さ | 8〜12回で限界になる重さ |
| セット数 | 1〜3セット |
| 頻度 | 週2〜3日 |
| セット間の休憩 | 1〜2分 |
| 重さの上げ方 | 目標より1〜2回多くできる日が2回続いたら、2〜10%上げる |
フォームが崩れた回は数えず、その時点でセットを終えます。毎セットを限界まで追い込む必要もありません。15件の研究をまとめた分析では、限界まで行う場合と手前で止める場合で、筋肉の増え方に有意な差はありませんでした。
よくある崩れと直し方は?腰を振る・肩がすくむ・肘が開く
| 崩れ | 見分け方 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 腰を振る | 引くたびに上体が後ろへ倒れ、戻すたびに前へ倒れる | 上体の反動で重りが動き、背中と腕で引く量が減る | 重さを下げ、上体を垂直に止めてから引く |
| 肩がすくむ | 引き終わりで肩が耳に近づく | 肩をすくめる僧帽筋上部で引く形になる | 肩を耳から遠ざけたまま肘を引く |
| 肘が開く | 三角形のハンドルなのに肘が横へ張り出す | 広背筋の活動と出せる力が下がる | 肘を脇腹に沿わせ、ハンドルをお腹へ引く |
本サイトは、3つの崩れが出たらまず重さを下げて動きを直すことを勧めます。
横から動画を撮ると、上体の角度と肘の位置を確かめやすくなります。
ハイロックスではどこで効きますか
ハイロックス(HYROX)は、1kmのランと8種目を交互に行うフィットネスレースです。ケーブルローは種目にありませんが、次の2種目の引く力の補強として使えます。
| 種目 | ケーブルローとのつながり | ケーブルローと違う点 |
|---|---|---|
| Sled Pull(スレッドプル) | ロープを手繰る腕と背中の引き | 本番は立ったまま、後ろに体重を預けて脚で踏ん張る |
| Rowing(ローイング) | 1回の引きの最後に腕を引く部分 | 脚→上体→腕の順に力を出し、上体も前後に動く |
ケーブルローの「上体を止めて引く」形は、どちらの本番の動きとも違います。スレッドプルは、そり込みで78kg(WOMEN OPEN)から153kg(MEN PRO)のそりを、体重を使って引く種目です。ローイングは脚から力を出す種目で、腕から先に引くと脚の大きな力を使い切れません。
ケーブルローは、背中と腕の引く力の土台作りと考えてください。本番の引き方は、種目の記事で別に練習します。そりが無いジムでの練習は普通のジムでできるハイロックス対策、全体の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイドにまとめています。
注意点・向かない人・限界は
腰に痛みがある人。 痛みがあるまま続けず、医師に相談してください。ワイドの握りでは、戻す局面で背骨に沿った脊柱起立筋の活動が大きくなったという研究もあります。
研究の対象は限られています。 紹介した研究は8〜21人と少人数で、多くは鍛えた男性です。測ったのはその場の筋活動で、続けたときの筋肉の増え方ではありません。
ケーブルローだけではハイロックスに備えられません。 ハイロックスは合計8kmを走る競技で、背中の種目は走る練習の代わりになりません。
よくある質問
Q1: ケーブルローとケーブルローイングは違う種目ですか?
A: 同じ種目です。座って行うシーテッドケーブルローを指すことが多く、本記事もこれを扱っています。立って片手で引くケーブルローもあります。
Q2: ナローとワイドはどちらから始めればいいですか?
A: ACEの初心者向けの手順は、狭いハンドルを使っています。研究ではナローのほうが重さを扱え、広背筋の活動も大きくなりました。慣れてから、肩甲骨の間を狙うワイドを加える順が分かりやすい方法です。
Q3: 肩甲骨はずっと寄せたままにするべきですか?
A: どちらでも構いません。肩甲骨を寄せたまま固定する引き方と、毎回寄せる引き方を比べた研究では、全体の筋活動はほぼ同じで、差は一部の筋肉に限られました。寄せる意識が僧帽筋中部・菱形筋の活動を変えなかった研究もあります。肩をすくめないことを優先してください。
Q4: ラットプルダウンや懸垂とはどう違いますか?
A: ケーブルローは前から、ラットプルダウンと懸垂は上から引きます。上から引く種目は懸垂のやり方で扱っています。
Q5: 引くと腰が痛くなります。どうすればいいですか?
A: その日は中止してください。痛みが続く場合は医師に相談してください。医師に止められていなければ、再開するときは重さを下げ、上体を垂直に保てる範囲で行います。
まとめ
ケーブルローは、ハンドルをお腹へ引き寄せる背中の種目です。研究では、広背筋と僧帽筋中部・菱形筋の活動が高くなりました。三角形のハンドルで肘を脇腹に沿わせると広背筋、長いバーで広く握ると僧帽筋がより働きます。
重さは8〜12回で限界になる重さを1〜3セット、週2〜3日から始めます。腰を振る・肩がすくむ・肘が開くときは、重さを下げて上体を止め直してください。
ハイロックスでは、スレッドプルとローイングの引く力の土台になります。練習全体の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイド、本番の引き方はSled Pull攻略とRowing攻略を参照してください。
※本サイトはハイロックス(HYROX)の非公式のファンサイトです。HYROXおよび関連する名称・ロゴは HYROX World GmbH の商標であり、本サイトは同社およびその関連会社とは一切関係がありません。大会日程・ルール・料金は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は公式サイトをご確認ください。
※本記事は医療・健康上の助言ではありません。持病のある方、体調に不安のある方は医師に相談のうえ運動してください。記載の回数・セット数は一般的な目安で、個人の状態に応じた処方ではありません。
※本記事は次の資料に基づきます。スレッドプルの重量は HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27 によるもので、ルールブックは毎シーズン改訂されます。
- 効く筋肉(引く種目5つの比較): Handa ほか(2005)体力科学
- 効く筋肉(僧帽筋中部・菱形筋)・肩甲骨を寄せる意識: Lehman ほか(2004)
- ナローとワイドの比較・研究での動きと速さ: Padovan ほか(2026)J Hum Kinet
- 肩甲骨を固定する引き方との比較: Padovan ほか(2026)J Funct Morphol Kinesiol
- 肘の開き方と筋活動・力: Vasconcelos ほか(2023)
- 手順: ACE Exercise Library: Seated Row
- 回数・セット数・頻度・休憩・重さの上げ方: ACSM Position Stand: Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults(2009)
- 限界まで行うか: Refalo ほか(2023)
- 頻度・呼吸: 厚生労働省「筋力トレーニングについて」(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023)
- スレッドプルの重量: HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27
