懸垂のやり方|できない人の練習の順番・効く筋肉・正しいフォームを研究から解説

懸垂のやり方|できない人の練習の順番・効く筋肉・正しいフォームを研究から解説

最終更新: 2026年10月7日

懸垂は、バーにぶら下がった状態から肩甲骨を下げ、肘を曲げてあごがバーを越えるまで体を引き上げる種目です。主に背中の広背筋と、腕の上腕二頭筋が働きます。1回もできない人は、ぶら下がり→肩甲骨を下げる動き→斜め懸垂→ネガティブ懸垂→補助つき懸垂の5段階で練習し、各段階の動作がきれいにできたら次へ進みます。

この記事の要点

  1. 懸垂は肩甲骨を下げる動きから始まり、肘を曲げて体を引き上げます。研究では、順手でも逆手でも最も大きく働いたのは広背筋でした
  2. できない人は、デッドハング→スキャプラ・プルアップ→斜め懸垂→ネガティブ懸垂→補助つき懸垂の5段階で進めます。次へ進む基準は回数ではなく動作の質です
  3. 懸垂はハイロックス(HYROX)の種目ではありません。ただし引く力と握り続ける力は、Sled Pull(スレッドプル)とFarmers Carry(ファーマーズキャリー)の土台になります
この記事の内容

懸垂はどこに効きますか(効く筋肉と順手・逆手の違い)

男性21人・女性4人の筋活動を測った2010年の研究では、懸垂で最も大きく働いたのは広背筋でした。数値は、静止した状態で全力を出したときの筋活動を100%としたときの割合です。100%を超えるのは、動きの中のほうが筋活動が大きかったためです。

筋肉場所筋活動
広背筋脇の下から腰にかけての背中117〜130%
上腕二頭筋力こぶの筋肉78〜96%
棘下筋肩甲骨の裏側71〜79%
僧帽筋下部肩甲骨の下側45〜56%
大胸筋胸44〜57%

※順手・逆手・回転するハンドルの3種類を通した範囲です。

手の向きによる違いもあります。逆手(チンアップ)は上腕二頭筋と大胸筋の活動が順手より大きく、順手(プルアップ)は僧帽筋下部の活動が大きくなりました。広背筋に有意な差は報告されていません。

同じ研究は、動きの順番も調べています。引き始めに働くのは僧帽筋下部と大胸筋で、広背筋と上腕二頭筋は後半に最大になりました。僧帽筋下部は肩甲骨を下へ引く筋肉で、懸垂の動きは、肩甲骨を下げるところから始まります。

正しいフォームは?懸垂のやり方の手順

  1. バーを肩幅ほどの幅で握ります。親指もバーに回します
  2. 腕を伸ばしてぶら下がります。足が床に着くなら膝を曲げます
  3. 腕を伸ばしたまま、肩を耳から遠ざけるように肩甲骨を下げます
  4. 胸をバーに近づけるつもりで肘を下へ引き、あごがバーを越えるまで上がります
  5. 同じ軌道でゆっくり下ろし、腕が伸びきったところで1回とします
よくある崩れ何が起きるか直し方
脚を振って反動で上がる引く力の練習にならない脚をそろえ、体を揺らさずに引く
肩をすくめたまま引く肩甲骨が下がらず、腕だけで引く形になる手順3を1回ずつ入れてから肘を曲げる
下ろしきらない可動域が狭くなり、回数だけが増える毎回、腕が伸びきるまで下ろす
あごだけを突き出す首に力が入り、体は上がっていない目線を前に保ち、胸をバーへ近づける

回数よりも、腕が伸びきるところまで下ろすことを優先してください。

1回もできない人は何から練習すればいいですか

米国スポーツ医学会(ACSM)の筋力トレーニング指針は、筋肉を縮めながら力を出す動き、伸ばされながら耐える動き、止まって耐える動きの3つを入れるよう勧めています。順番までは決めていません。下の5段階は、この3つを懸垂に当てはめて本サイトが並べた順番です。次へ進む基準は、回数ではなく動作の質で決めます。

段階やること次へ進む基準
1. デッドハングバーにぶら下がって静止する。きついときは足を台に乗せ、体重の一部を預ける足を離し、肩をすくめず体を揺らさずに静止できる
2. スキャプラ・プルアップ肘を伸ばしたまま肩甲骨を下げ、体を少し持ち上げて戻す肘を曲げず、反動なしで上げ下げをくり返せる
3. 斜め懸垂(インバーテッドロウ)腰ほどの高さのバーを握り、体を一直線にして胸をバーへ引き寄せる体を床と平行に近づけても、腰が落ちずに胸がバーに届く
4. ネガティブ懸垂台に乗ってあごがバーを越えた位置から、できるだけゆっくり下ろす下ろす速さを最後まで一定に保てる
5. 補助つき懸垂ゴムバンドに足をかける、または軽く跳んで上がる動きを助ける補助を弱めても、反動なしであごがバーを越える

段階1と2は、懸垂の始まりの姿勢を作る練習です。ぶら下がる力は握力の「持ち続ける力」で、鍛え方は握力の鍛え方にまとめています。

段階3の斜め懸垂は、足の位置で重さを変えられます。体を立てるほど軽く、寝かせるほど重くなります。

段階3と5の回数と頻度は、ACSMの初心者向けの目安に合わせます。体の角度やバンドの強さを、8〜12回で限界になる難しさに調整し、1〜3セットを週2〜3日行います。目標より1〜2回多くできる日が続いたら、角度を寝かせるかバンドを弱めて難しくします。厚生労働省の指針も、自重の運動を含む筋トレを週2〜3日勧めています。段階1・2・4は根拠のある数値が無いため、回数の目安は出しません。

何週間で1回目に届くかは人によって違います。本サイトは期間の目安を出しません。

ジムならラットプルダウンも使えます。 懸垂が1回以上できる男子大学生34人を2組に分けた研究があります。通常のラットプルダウンを週3回・8週間続けた組で、懸垂の回数が平均2.18回から5.82回に伸びました。もともと1回はできた人の結果なので、0回の人に同じ伸びが出るとは限りません。

ハイロックスではどこで効きますか

ハイロックス(HYROX)は、1kmのランと8種目を交互に行うフィットネスレースです。懸垂は8種目にも、公式の実力診断(PFT)にも入っていません。それでも、懸垂の練習で鍛える力は次の2種目につながります。

種目懸垂の練習とのつながり
Sled Pull(スレッドプル)ロープを引く動作と、ロープを握り続ける力
Farmers Carry(ファーマーズキャリー)ぶら下がりで鍛える「持ち続ける力」

一番関係が深いのはスレッドプルです。そり込みで78kg(WOMEN OPEN)から153kg(MEN PRO)のそりを、ロープを手繰って50m引き寄せます。ただし本番は立ったまま後ろに体重を預け、脚で踏ん張って引く種目です。懸垂の腕で引き上げる動きと、スレッドプルの引き方は同じではありません。懸垂は引く力と握力の土台作りと考え、本番の引き方はSled Pull攻略で練習してください。

握力は、3種目めのスレッドプルと6種目めのファーマーズキャリーの両方で使います。懸垂の練習を練習計画のどこに入れるかは、ハイロックスのトレーニング完全ガイドの考え方に合わせてください。

注意点・向かない人・限界は

肩や肘に痛みがある人。 ぶら下がるだけでも肩と肘には体重がかかります。痛みがあるまま練習を続けず、整形外科などの医師に相談してください。

手幅の広い懸垂と逆手の懸垂。 懸垂に慣れた11人の肩甲骨の動きを測った研究では、手幅の広い懸垂と逆手の懸垂で、肩の詰まり(インピンジメント)と関係する動きのパターンが見られました。この研究で、肩の詰まりと関係する動きが目立たなかったのは標準の手幅の順手でした。ただし、けがを直接調べた研究ではありません。肩に不安がある人は、まず医師に相談してください。同じ研究は、補助つきの順手の懸垂を力の弱い人に勧められる可能性があるとしつつ、追加の研究が必要としています。

家庭用の懸垂バー。 ドア枠に付けるタイプは、製品ごとに耐荷重と取り付けられる枠の条件が決まっています。体重をかける前に説明書の条件を確認してください。

懸垂だけではハイロックスに備えられません。 ハイロックスは合計8kmを走る競技で、懸垂は走る練習の代わりになりません。

よくある質問

Q1: 懸垂が1回もできないのはなぜですか?

A: 本サイトは、体重を引き上げる力、肩甲骨を下げる動き、ぶら下がり続ける握力の3つに分けて考えています。この記事の5段階は、この3つを順に埋める並びにしています。

Q2: 毎日練習してもいいですか?

A: 初心者は週2〜3日が目安です。肩や肘に痛みが出たら中止します。

Q3: 順手と逆手はどちらから始めればいいですか?

A: どちらでも構いません。研究では、どちらも最も大きく働いたのは広背筋でした。逆手は上腕二頭筋の活動が大きくなります。肩の動きを調べた研究で、肩の詰まりと関係する動きが目立たなかったのは標準の手幅の順手でした。肩に不安がある人は、まず医師に相談してください。

Q4: ジャンプ懸垂とバンド補助はどちらがいいですか?

A: 道具が無ければジャンプ懸垂、バンドがあればバンド補助で構いません。どちらも、跳ぶ力やバンドの助けを少しずつ減らせるかが次へ進む基準です。

Q5: 自宅で斜め懸垂はできますか?

A: 体重をかけても動かない丈夫なバーがあればできます。公園の低い鉄棒も使えます。家具やテーブルの縁は、倒れたり外れたりするおそれがあるため使わないでください。

Q6: ハイロックスに出るには懸垂ができないといけませんか?

A: いいえ。懸垂は8種目にもPFTにも入っていないため、できなくても出場や完走に支障はありません。引く力と握力の練習の1つとして取り入れる位置づけです。

まとめ

懸垂は、肩甲骨を下げてから肘を曲げ、あごがバーを越えるまで体を引き上げる種目です。最も大きく働くのは広背筋で、逆手にすると上腕二頭筋の活動が増えます。

1回もできない人は、デッドハング、スキャプラ・プルアップ、斜め懸垂、ネガティブ懸垂、補助つき懸垂の順に進めます。各段階の動作がきれいにできたら次へ進み、週2〜3日、8〜12回で限界になる難しさで続けます。

ハイロックスでは、引く力と握力がスレッドプルとファーマーズキャリーの土台になります。練習全体の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイド、本番の引き方はSled Pull攻略、握力の鍛え方は握力の鍛え方を参照してください。


※本サイトはハイロックス(HYROX)の非公式のファンサイトです。HYROXおよび関連する名称・ロゴは HYROX World GmbH の商標であり、本サイトは同社およびその関連会社とは一切関係がありません。大会日程・ルール・料金は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は公式サイトをご確認ください。

※本記事は医療・健康上の助言ではありません。持病のある方、体調に不安のある方は医師に相談のうえ運動してください。記載の回数・セット数は一般的な目安で、5段階の順番と次へ進む基準は本サイトが組んだ例です。いずれも研究に基づく個人向けの処方ではありません。

※本記事は次の資料に基づきます。スレッドプルの重量は HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27 によるもので、ルールブックは毎シーズン改訂されます。

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