最終更新: 2026年11月3日
プッシュプレスとは、膝を軽く曲げて沈み、脚を伸ばす勢いで重りを頭上へ押し上げる種目です。手順は、肩の前で構える、軽く沈む、脚で押し上げる、頭上で止める、肩へ戻すの5つです。ショルダープレスとの違いは、脚の力を使うかどうかにあります。ショルダープレスは脚を使わず、主に肩と腕で押し上げます。
この記事の要点
- 沈むのは膝を軽く曲げる程度の浅さです。底で止まらずに脚を伸ばし、その勢いを腕へ渡します。足は床から離しません
- 全米ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の見解では、ショルダープレスは先に覚える基礎の筋力種目で、プッシュプレスはその次の段階の種目です
- 脚を伸ばした後に膝を曲げ直して重りの下に入ると、プッシュジャークという別の種目になります
プッシュプレスとショルダープレスは何が違いますか?
違いは、下半身の力を腕へ伝えるかどうかです。2019年の総説は、立って行うショルダープレスを主に上半身の筋肉で押し上げる種目とし、脚と体幹は支えに回ると整理しています。プッシュプレスは、膝と股関節を伸ばす力を体幹から腕へ伝えます。
| 比べる点 | プッシュプレス | ショルダープレス(立って行う) |
|---|---|---|
| 脚の使い方 | 軽く沈み、伸ばす勢いで押し上げる | 使わない。立った姿勢を保つ |
| 主に使う部位 | 脚(股関節・膝・足首を伸ばす)・体幹・肩・腕の裏 | 肩・腕の裏(脚と体幹は支え) |
| 動きの速さ | 一気に素早く挙げる | 一定の速さで押す |
| 扱える重さ | 脚の力が加わる | 肩と腕で挙げられる重さまで |
| 向いている目的 | 全身で素早く力を出す練習 | 肩と腕の筋力と筋肉をつける |
| 覚える順番 | ショルダープレスの後 | 先に覚える |
NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の2023年の見解は、脚を使わないプレスを基礎の筋力種目に置いています。プッシュプレスはその上の段階です。ショルダープレスで頭上へ押す形を作ってから進むのが、この順番に沿った始め方です。
NSCAはプッシュプレスなどを、重い重さを素早く挙げられる種目と説明しています。ただし扱える重さの差を直接比べた研究は見つからず、「何kg重くできる」と言える数字はありません。
正しいやり方は?構えから戻すまで
NSCAの種目解説書(第4版)と2023年の見解をもとにした手順です。
- 足を腰幅から肩幅に開いて立ち、重りを肩の前に構えます
- 上体をまっすぐ立て、腕は動かさずに膝と股関節を軽く曲げて沈みます(ディップ)
- 底で止まらず、股関節・膝・足首を一気に伸ばし、その勢いで重りを真上へ押し上げます(ドライブ)
- 肘を伸ばし切って頭上で止めます
- 重りをコントロールしながら肩の前へ戻します
NSCAの見解は沈む動きを「素早い部分的なしゃがみ」、種目解説書は「浅いしゃがみ」と説明しています。深くしゃがまず、膝を軽く曲げる程度で切り返します。
押し上げる間も、足は床から離しません。足首は伸ばしますが、跳び上がる動きではありません。
脚の反動はどう入れますか?
沈む・伸ばす局面は、重量挙げのジャークと共通です。下の表は、NSCAがジャークの崩れに挙げたものからプッシュプレスに当てはまるものを選びました。起きることと直し方は本サイトの説明です。
| 崩れ | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 沈むときに上体が前へ倒れる | 重りが前へ流れる | 胸を張り、真下へ沈む |
| 沈んだ姿勢で体幹を固められない | 脚の力が腕へ伝わりにくい | 構えでお腹に力を入れ直す |
| 沈むのが速すぎる | 押し上げる勢いが出にくい | 一定のリズムで浅く沈む |
| 頭上で腰を反らせて受ける | 腰が反った形で重さを支える | 重さを下げ、肋骨を締める |
最初に直すのは、沈むときに上体を立てたままにすることです。上体が倒れると、脚の力が前へ逃げます。
脚を伸ばし切った後、膝をもう一度曲げて重りの下に入るのは別の種目です。膝を曲げて受けるとプッシュジャークになります。プッシュプレスでは、脚を伸ばしたまま腕で押し切ります。
ダンベルとバーベルでやり方はどう変わりますか?
動きの順番は同じで、構え方が変わります。
| 比べる点 | ダンベル | バーベル |
|---|---|---|
| 構え | 両手のダンベルを肩の前に構える | ラックから外し、肩の前側に乗せる |
| 向く場面 | 自宅、左右の差を確かめたいとき | ジムで重さを少しずつ上げたいとき |
| 注意 | 左右がばらばらに上がりやすい | バーが顔の前を通るので真上へ押す |
ショルダープレスの研究ですが、男性15人で比べた結果があります。立って行う場合、ダンベルはバーベルより挙がる重さが約7%小さくなりました。一方で、肩の筋肉(三角筋の前部と中部)の活動はダンベルのほうが大きくなっています。
プッシュプレスでも同じかは確かめられていません。本サイトは、ダンベルで左右をそろえてからバーベルへ移る順を勧めます。ダンベルの全身メニューはダンベルトレーニングの初心者メニュー、ケトルベルで頭上へ押す方法はケトルベルトレーニング入門を参照してください。
重さと回数の目安は?
プッシュプレスの初心者向けの回数を決めた研究は、本サイトの調べた範囲では見つかりませんでした。下は、米国スポーツ医学会(ACSM)とNSCAの目安を当てはめたものです。
| 種目と目的 | 重さ・回数 | セット数 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ショルダープレス(筋力・筋肉) | 8〜12回で限界になる重さ | 1〜3 | ACSM |
| プッシュプレス(覚える段階) | 軽〜中程度の重さ(上半身は1回で挙がる最大の重さの30〜60%)で3〜6回、限界まで行わない | 1〜3 | ACSMのパワー練習の目安 |
| プッシュプレス(筋力とスピードを高めたい、慣れた人) | 1回で挙がる最大の重さの70%以上を検討する | — | NSCA |
NSCAの見解は、初心者は技術を優先し、重さは慎重に少しずつ上げるよう求めています。最大に近い重さで練習すると、崩れた動きが身につきやすいためです。本サイトは、ショルダープレスで楽に扱える重さから始めることを勧めます。
鍛えた男性17人の研究では、瞬間のパワーが最も大きかったのは1回で挙がる最大の重さの約75%で、平均のパワーでは約65%でした。人によるばらつきは大きく出ています。
ハイロックスのどの種目につながりますか?
ハイロックス(HYROX)の最終種目Wall Balls(ウォールボール)では、ボールを胸の前に持ってしゃがみ、立ち上がる勢いで頭上のターゲットへ投げます。ボールは4kg・6kg・9kg、ターゲットは女子2.70m・男子3.00mで、100回行います。
つながるのは、脚を伸ばす勢いを腕へ渡すという力の流れです。プッシュプレスは、この順番を重りで練習できます。
ただしウォールボールは、毎回股関節を膝より下まで沈めないと数えられません。プッシュプレスの浅い沈みでは、この深さは練習できません。深さはゴブレットスクワットで作ります。しゃがみと押し上げを1回にまとめる代わりの練習は普通のジムでできるハイロックス対策で紹介しています。
プッシュプレスでウォールボールのタイムが縮むと示した研究は確認できていません。判定基準はWall Balls攻略、練習全体での位置づけはハイロックスのトレーニング完全ガイドにまとめています。
注意点・向かない人・限界は?
肩や腰に痛みがある人。 痛みが出たらその場で中止してください。痛みが続くときや持病があるときは、医師や専門家に相談します。
腕を真上まで上げきれない人。 NSCAは、肩の柔軟性不足で肘を伸ばし切れないことを崩れに挙げています。腰を反らせて補いやすいため、まずショルダープレスを軽い重さで行います。2019年の総説は、肩を上げる柔軟性が足りない人や肩を痛めている人に、首の後ろから押す形を避けるよう勧めています。
研究の限界。 2種目を同じ人で直接比べた研究は見つかりませんでした。パワーの研究は鍛えた男性17人の1回の測定です。2019年の総説も、研究は13件で人数が少なく、長期間続けた効果のデータは無いと述べています。
よくある質問
Q1: プッシュプレスとプッシュジャークは何が違いますか?
A: 脚を伸ばした後に膝をもう一度曲げて、重りの下に入るかどうかです。プッシュジャークは4分の1スクワットの姿勢で受けます。NSCAの見解が引く鍛えた選手の研究では、1回で挙がる最大の重さは、プッシュプレスがスプリットジャークの約87%、プッシュジャークが約95%でした。
Q2: スプリットジャークとの違いは?
A: 脚を伸ばした後、足を前後に開いて頭上で重りを受けるのがスプリットジャークです。NSCAの見解では、3種目のうち最も重い重さを挙げられます。プッシュプレスは足を動かさず、腕で押し切ります。
Q3: 座って行うショルダープレスとの違いは?
A: 座ると脚の勢いは使えません。男性15人の研究では、ダンベルのショルダープレスで挙がる重さは、立って行うほうが座って行うより約10%小さくなりました。肩の後ろ側の筋肉の活動は、座ると約24%小さくなっています。
Q4: ダンベルは何kgから始めればいいですか?
A: 決まった重さはありません。重さの決め方はダンベルトレーニングの初心者メニューで扱っています。
Q5: 毎日やってもいいですか?
A: 週2〜3日を目安にし、連続した日には行わず1日あけてください。ACSMの初心者向けの頻度に合わせた目安です。
まとめ
プッシュプレスは、浅く沈んで脚を伸ばす勢いで重りを頭上へ押し上げる種目です。ショルダープレスで頭上へ押す形を作ってから、軽い重さで始めてください。
ハイロックスに向けた練習の組み立てはハイロックスのトレーニング完全ガイドで確認してください。
※本サイトはハイロックス(HYROX)の非公式のファンサイトです。HYROXおよび関連する名称・ロゴは HYROX World GmbH の商標であり、本サイトは同社およびその関連会社とは一切関係がありません。大会日程・ルール・料金は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は公式サイトをご確認ください。
※本記事は医療・健康上の助言ではありません。持病のある方、体調に不安のある方は医師に相談のうえ運動してください。記載の回数・セット数は一般的な目安で、個人の状態に応じた処方ではありません。
※本記事は次の資料に基づきます。ウォールボールの規定は HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27 によるもので、ルールブックは毎シーズン改訂されます。
- 手順・ディップとドライブ: NSCA「Exercise Technique Manual for Resistance Training」第4版(Human Kinetics の抜粋)
- 覚える順番・崩れ・初心者の重さ・プッシュジャークとの違い: NSCA Position Statement on Weightlifting for Sports Performance(Comfort ほか 2023)
- ショルダープレスとの違い・首の後ろから押す形・研究の限界: Soriano ほか(2019)
- パワーが最大になる重さ・ジャンプスクワットとの比較: Lake ほか(2014)
- 立つ・座る、ダンベル・バーベルのショルダープレス: Saeterbakken・Fimland(2013)
- 回数・セット数・頻度: ACSM Position Stand: Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults(2009)
- ウォールボールの規定: HYROX SINGLE RULEBOOK 26/27
